「自分では筋が通っているつもりなのに、うまく説明できない」「記事を読んで納得したはずなのに、何が大事だったか思い出せない」。こんな場面で、考える内容と一緒に見直したいのが、自分がどう考えているかです。
その手がかりになるのが「メタ認知」。難しく聞こえますが、入口は身近です。「今、何を根拠にそう思った?」「ほかにどんな説明ができる?」「次に何を確かめる?」と、自分の考えに問いを向けてみます。
この記事では、メタ認知の意味を整理したうえで、日常で使える3つの問いと、5分を目安に試せるメモの書き方を紹介します。
メタ認知とは、自分の「考え方」に目を向けること
たとえば、本の内容について考えるのが「認知」だとすると、「この説明を自分は本当に理解できているだろうか」と確かめるのが、メタ認知の一例です。
心理学者のFlavellは、メタ認知を考える枠組みとして、自分や課題、方法についての知識、理解できた・できないという経験、目標、行動の相互作用を示しました。理解の状態に応じて方法を見直すところまでつながる考え方です。[1]
本を読んでいて説明できない箇所に気づいたら、そこに戻る。会話がかみ合わないと感じたら、相手の言葉を言い換えて確認する。こうした小さな動作で考えてみると、少し身近になります。
論理的思考とは、どこが違う?
論理的思考が「根拠から結論へ、筋道を組み立てること」だとすると、メタ認知は「今の自分は、どんな根拠を使って、どこで迷っているのかを点検すること」と捉えられます。
たとえば「予定が重なるから、その日は参加できない」と説明するのは筋道を組み立てる作業です。一方、「参加したくない気持ちが先にあって、断る理由だけを探していないか」と振り返るのは、考え方の点検です。
どちらも使うことで、自分の説明を見直しやすくなります。筋道の組み立て方については、「【論理的思考は必要?】鍛え方4選と必要性」でも扱っています。
「分かった気がする」を、どう確かめるか
答えや解説を見ながらだと、すんなり理解できた気になることがあります。けれども、何も見ずに説明しようとすると、途中で言葉が止まる。この違いは、考え方を点検するよい入口です。
KoriatとBjorkの単語対を使った学習実験では、学習時には答えが見えている一方、テスト時には見えないという状況の違いが、学習できたという判断の過大評価につながることが検討されています。[2]
これは、そのままあらゆる読書や仕事の場面で同じ結果が出るという意味ではありません。ただ、日常の点検方法として、「納得したか」に加えて「手がかりを外して説明できるか」を試すという発想は使えます。
記事を閉じて、要点を一文にしてみる。説明できなかった部分があれば、そこを読み直す。うまく言えなかった箇所は、次に確かめる場所を教えてくれます。
自分の考えを整理する3つの問い

ここからは、日常で試すための提案です。研究で効果が確認された特定の訓練プログラムではなく、自分の考えを言葉にするための補助として使ってください。
1.今、何を根拠にそう思った?
たとえば、友人から返信が来ず、「何か怒らせたかもしれない」と考えたとします。このとき、見えている出来事と、その出来事につけた意味を分けて書いてみます。
- 確認できたこと:昨日送ったメッセージに、今の時点で返信がない。
- 自分の解釈:相手は怒っているのかもしれない。
- 自分の気持ち:気になっている。早く返事がほしい。
「怒っている」という解釈が間違いだと決める必要はありません。ただ、返信がないという出来事だけで、相手の気持ちまで確定できるかは別の問題です。
気持ちも書くのは、何を気にしているのかを知るためです。焦りを感じたことと、焦りの中で思いついた説明が正しいことは、分けて考えられます。
2.ほかに、どんな説明ができる?
次に、同じ出来事を説明できる別の可能性を一つ挙げます。「忙しいのかもしれない」「返信する時間を取ってから返そうとしているのかもしれない」。どちらも、現時点では仮説です。
ここで大事なのは、無理に明るい解釈へ置き換えないことです。「きっと大丈夫」と断言する代わりに、「理由はまだ分からない」と置いておくこともできます。
ニュースやSNSの投稿を読むときなら、「この結論と合わない情報はあるか」「元の調査では誰を対象にしているか」と問いを変えてみましょう。一つの説明を採用する前に、確かめる余地を残せます。
3.次に、何を確かめればよい?
考えを広げたら、最後は確認することを一つに絞ります。返信の例なら、まず自分が送った文章を見直し、返答期限を伝えていたかを確認する、という行動が考えられます。
読書なら「分からなかった用語を調べる」。仕事なら「依頼された成果物の完成条件を確認する」。次の一手を具体的にすると、考えた内容を行動につなげられます。
判断を保留する場合も、「何が分かれば判断するか」を書く。ここまで決めれば、すべての答えを今すぐ出す必要はありません。
5分で試す、思考メモの書き方
紙でもスマホでも構いません。まずは小さな出来事を一つ選び、次の5行を書いてみてください。5分は取りかかりやすくするための目安です。
① 出来事:実際に何が起きた?
② 解釈・気持ち:自分はどう受け取った?
③ 根拠:その解釈を支える情報は?
④ 別の可能性:ほかにどんな説明がある?
⑤ 次の一手:何を、いつ確かめる?
記入例:会議で提案への反応が薄かった
- 出来事:提案後に質問が出ず、次の議題へ進んだ。
- 解釈・気持ち:価値のない提案だったのかもしれない。残念だった。
- 根拠:賛成の発言はなかった。ただし、反対も理由の説明もなかった。
- 別の可能性:判断材料が不足していた、または会議の残り時間が少なかった可能性がある。
- 次の一手:明日、担当者に「検討するために不足している情報は何か」を確認する。
このメモの時点では、提案が良かったか悪かったかは決まりません。それでも、「自分の提案は価値がない」という大きな結論から、「何が足りないかを確認する」という具体的な作業へ進めます。
後日、分かったことを一行追記してみてください。最初の予想と実際の返答を並べると、自分がどの情報を頼りに判断していたのかを振り返れます。
点検は、次の一手が決まったところで区切る
自分の考えを点検し始めると、「この見方も間違っているかも」と際限なく確認したくなることもあります。毎回、すべての可能性を出し切ろうとすると、一つのメモが終わりません。
このワークでは、別の可能性を一つ書き、次に確かめることが決まったら区切りにしましょう。情報が足りない部分は「不明」と書いて構いません。
思考を趣味にするなら、うまく考えられたかを採点するだけでなく、「自分は、ここでこう受け取ったんだ」と発見する時間も大切にしたいところです。
今日、少し引っかかった出来事を一つ思い出してみてください。まずは「起きたこと」と「自分がそう思ったこと」を、別々の一行にするところから始めてみましょう。
次に読む:情報・学習・行動を見直す
自分に都合のよい情報だけ集めていないかを確かめたい方は、確証バイアスの具体例と見直す方法へ。
学んだ内容を自分で説明できるか試したい方は、アクティブリコールの勉強法へ。
考えたことを行動に移すタイミングを決めたい方は、If-Thenプランの作り方へ進んでみてください。
参考文献
- Flavell, J. H. (1979). Metacognition and cognitive monitoring: A new area of cognitive–developmental inquiry. American Psychologist, 34(10), 906–911. 論文本文(PDF)
- Koriat, A., & Bjork, R. A. (2005). Illusions of competence in monitoring one’s knowledge during study. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 31(2), 187–194. 論文情報・要旨(PubMed)


コメント